インバスケット演習の新作について

難易度20のインバスケット演習がスタートしました

4月中旬から課題として挙がっていた「簡単なインバスケット演習(難易度が低い演習)」が、2025年5月より活用可能となりました。受講者の皆さんには、ぜひ積極的にご活用いただきますようお願い申し上げます。
さて、今回のコラムは短めになりますが、簡単なインバスケット演習を作成する中で感じた意外な点を少しお話しさせてください。

簡単なインバスケット演習は作成も簡単だった

毎年4月は昇進・昇格アセスメントの閑散期であり、まとまった作成時間が確保できたことが背景にあります。それでも、他のケーススタディやインバスケット演習、さらには他のコンテンツの作成と並行しての作業でした。
当初、他のケーススタディなどと比較して「簡単」と感じたのですが、テストプレイを担当したメンバーからは「簡単に見えるが意外と難しかった」との声が相次ぎました。
自身が「簡単」と感じた理由は、他のケーススタディやインバスケット演習に比べて、案件数や文章量が少ないこと、そしてその結果、受講者のコンピテンシーを把握・評価するための「仕込み」や「仕掛け」をほとんど設けられなかったことです。つまり、「簡単=あまり複雑なことを考えずに作成できる」という感覚でした。
では、テストプレイを担当したメンバーの「難しい」という声と、作成者の「簡単だった」という印象のギャップはどのように解釈すべきでしょうか。

ギャップの解釈

作成者が「簡単」と感じたのは、案件数や文章量が少なく、「仕掛け」や「仕込み」が最小限だったことによる設計と作成のシンプルさにあります。一方、テストプレイを担当したメンバーが「難しい」と感じたのは、このシンプルな全体設計や案件構造が、問題の原因を分析するための情報、決断の根拠、解決策の方向性を定める材料をほとんど提供せず、「何を解答すべきかイメージできない」状態を生み出したためと考えられます。このギャップは、作成者が演習を設計する視点と、受講者として演習に取り組む実行者の視点の違いから生じています。

まとめ

さて、ここまで読んでいただいた受講者の皆さんにアドバイスです。

受講者の皆さんがインバスケット演習に取り組む際、簡単な演習と難しい演習のどちらにおいても、「解決すべき問題点の明確化と背景や原因を分析する」「決断から逃げない」「解決策を具体的にイメージして立案する」という3つのアプローチが重要です。これは古今東西、インバスケット演習の基本中の基本ですからね。

ただし、作成者が設けた「仕掛け」や「仕込み」の違いによる演習の構造の差により、これらの実践には異なる注意点が求められます。

簡単なインバスケット演習では、作成者の「仕掛け」が少なく、情報量が限られているため、問題点の明確化や背景や原因の分析には、曖昧な手がかりの中から本質を見抜く鋭い洞察力、そして「インバスケット演習の設定や案件情報から【その場面を可能な限り具体的にイメージすること】」が必要です。決断から逃げないためには、情報不足による不安を乗り越え、積極的な仮説思考で判断を下す勇気が求められます。また、解決策を具体的にイメージするには、少ない情報から現実的な対応を創造する柔軟な発想が欠かせません。

一方、難しいインバスケット演習では、作成者が多くの「仕掛け」を組み込んだ結果、情報量や案件の多さが複雑さを生みます。問題点の明確化や背景や原因の分析には、複雑な「仕掛け」を解きほぐし、全体を俯瞰しつつ、真贋を見極めたり、仮説の上に仮説を掲げたりする分析力が求められます。決断から逃げないためには、情報の洪水や「仕掛け」の多さに圧倒されない強い意思が必要です。解決策を具体的にイメージするには、複数の選択肢や「仕掛け」を整理し、現実的かつ効果的な解決策を立案する力が重要です。
簡単な演習は、「仕掛け」の少なさの中で洞察力や決断力、創造力を磨き、難しい演習は、「仕掛け」の多さの中で分析力と解決策立案力を養います。したがって、簡単なインバスケット演習と難しいインバスケット演習の両方をトレーニングすることは、「インバスケット演習無双状態」になるために不可欠です。