簡単なインバスケット演習
インバスケット演習の難易度について考える
受講者の皆さんからご質問をいただく機会が多い観点です。
・管理職の昇格アセスメントを受講するのですが、どれくらいの難易度のインバスケット演習でトレーニングすべきでしょうか?
・昨年度に会社で受講したインバスケット演習に比べ、みんなのアセスメント・サブスク版のインバスケット演習がやけに難しいのはなぜですか?
・みんなのアセスメント・サブスク版では難易度60、サブリーダークラスの設定と聞いていますが、今回、会社で課長昇格試験を受けたら、同程度、あるいはもう少し易しいインバスケット演習が出題されました。
全体的に他のアセスメント業者、インバスケット業者に比べると、みんなのアセスメント・サブスク版のインバスケット演習は難しい印象を与えているようです。
インバスケット演習の難易度は何によって決定されるか?
今から2年前、2023年4月15日に作成したコラムにもありますが、以下が決定要素として上げられます。
① 関連性の貼り方
② 案件にある問題に関係するであろう人物、部門、関係先の数
③ 案件の数、メール文の分量、多段階の転送や返信メール
④ インバスケット演習で評価するコンピテンシーの領域
①、②、③はイメージし易いものの、④は少々イメージし辛いので補足すると、インバスケット演習で評価する思考、いわば「考える力」に該当するコンピテンシーは、その中でも現状改善系のものが中心となります。例えば理解力・分析力・計画力・創造力、通常、世間の皆さまがイメージするインバスケット演習では、この理解力・分析力・計画力・創造力に決断力、主体性などの姿勢、「信頼を得る力」の一部のコンピテンシーを合わせたものが評価されます。
一方、受講者の皆さんが会社で受講する昇進昇格アセスメントでは、それが部門長昇格であったり、課長昇格でも事業の未来を構想する力を昇格要件として設定したり、この場合には未来創造系の考える力に該当するコンピテンシーを設定することになります。例えば「大局観・概念化・革新性」など。
この場合、インバスケット演習で評価するコンピテンシーは6項目から9項目と1.5倍になるとともに、現状改善系と未来創造系はアウトプットとして案件処理だけでなく方針立案を要求することにもなり、必然的に「案件数を増やす(量的レベル)」、「マーケット状況や競合状況など外部環境に関する記述を増やす(質的レベル)」といった圧力がかかることになります。
部門長昇格用のインバスケット演習とバイトリーダー選出のインバスケット演習の違い
ここまでご説明すると、質問としてかなりの確率で上がるものは「インバスケット演習で与件とされる役割、つまりどの立場や役割で案件を処理するかという観点は難易度に関係しないのしょうか?」
流れからすると全く関係ありません…。
①~④の決定要素が先決であり、その中で設定される主人公の役割は気分的に受け止め的に関係ありと印象を与えるだけです。
一方、この決定要素をプラスの方向に動かしていく場合、主人公の役割を上位にしなければ不自然なインバスケット演習になります。
例えばですが、決定要素を以下とした場合、主人公の役割が部下無しの入社2年目クラスでは不自然ですからね。
・全ての案件に3つの要素の関連性が貼られている
・全案件数の半分の案件において、関係する人物が5名、関係する他部門が1、顧客とベンダーが必ず登場する
・案件の数が35、案件内の文字分量は約1,000、半分の案件には必ず返信や転送の構造が仕込んである
・導入部分には「我が国の第一次産業の将来動向レポート」、案件部分にも「業界全体の売上ランキング表」「基幹技術の発展経緯と将来予測レポート」「業界ランキングを大きく変えるであろうある技術についての詳細な説明文」「自社の主要顧客に対するアンケート結果(2ページ分)」が設定されている
このように主人公の役割は下位、①~④の決定要素はプラスの方向の場合は、受講者の皆さんも昇進昇格アセスメントを導入・実施する人事部門の方も「このインバスケット演習って何だかヘンじゃない?」となりますが、恐ろしいのは反対のケース、主人公の役割は上位、①~③がマイナスの方向は、比較的、受容されることになります(④を入れて考えると複雑になるのでカット)
そして、受講者の皆さんも人事部門の方も、インバスケット演習の難易度について一見で判断・判定することは困難なので、とりあえずイメージし易い主人公の役割でインバスケット演習の難易度、別の言い方をすれば「主人公の役割でそのインバスケット演習がこの昇進昇格アセスメントにマッチしているか」を判断している現状があります。
アセスメント業者やインバスケット業者は悪意で?
このようにインバスケット演習の難易度を決定する①~③、そして昇進昇格アセスメントの建付けによって決定される④、これらを横において主人公の役割レベルで難易度を印象付けているアセスメント業者やインバスケット業者は悪意によっているのかといった質問や疑問もいただきますが、弊社の答えは以下となります。そしてそのように答えさせていただいております。
・悪意なんてとんでもないです。ただ、そこまで考えていないだけです。
・20~30年前と比較して、コスパを重視した昇進昇格アセスメントの開催要求が強いので、インバスケット演習の実施時間をショートしなければならないからです。
・アセッサーの職人的な評価スキルによって受講者の皆さんの考える力を、詳しく・論理的に・分散を大きくして評価するのではなく、画一的な評価スキルによって大まかに・システム的に・分散を小さくして評価することを重視してビジネスを進めているからです。
今回のコラムの着地
今回のコラムは、複数のある受講者の方との対話をベースに記述しております。その中の1名の受講者の方、管理職昇格のアセスメントを会社で受講したところ、みんなのアセスメント・サブスク版の難易度40(バイトリーダー~サブリーダークラス)と同様の印象を与えるレベルのインバスケット演習が出題されたそうです。みんなのアセスメント・サブスク版でより難易度の高いインバスケット演習を数多くトレーニングしていたこともあり、会社で受講したときには「とっても大丈夫でした」と結果的には大満足されていたのですが、その会社というかアセスメント業者に対して「この現状って何なの?」と問題意識をお持ちになったようで、弊社が相談にのったという背景があります。
そして、その受講者の方から弊社に対しても厳しい意見をいただくことになりました。
もっと簡単なインバスケット演習を作成しなさい
弊社としては、その受講者の方が「とっても大丈夫」となったように、難易度の高いインバスケット演習に数多くチャレンジして、会社の昇進昇格アセスメントのインバスケット演習は容易く解答するほうがいいのではと提案したのですが、「コスパを考えるとみんなのアセスメント・サブスク版の難易度がさらに低いインバスケット演習を数多くトレーニングしたほうが良き」との解答でした…
みんなのアセスメント・サブスク版は現状、22本のインバスケット演習がトレーニング可能ですが、難易度40以下のものは手持ちとして存在しておりません。
なので、ゼロベースの作成となり、お時間かお期間をいただくことにことになりますが、難易度30、難易度10、難易度0、難易度マイナス20のインバスケット演習を今後、作成していくことをお約束をいたしました。
その受講者の方、とても口が悪いので「みんなのアセスメント・サブスク版で難易度10、これは他業者で考えるとサブリーダークラスですか?」「難易度マイナス20のインバスケット演習って、概念的に非常に興味があるけどはたして作成可能なものですか?」
他の善良で好意の塊の受講者のみなさん、今後、登場するインバスケット演習をどうぞお楽しみに!