面談演習の必勝法は「捏造」

そして先手必勝

ファクトやフェイクが世間を賑わす中、物議を醸す今回のテーマですが、時節柄、走り書きとなることをご容赦ください。

昇進昇格をかけた人材アセスメントで受講者の皆さんが取り組む各演習、インバスケット演習や方針立案演習、面談演習、グループ討議、その中で使用するケーススタディ類ですが、いってみれば「それらしく書いてあるけど、所詮、ケーススタディ、それも人材アセスメントといった特殊な世界でしか通用しない脆弱な内容」ではと実感しております。

なぜ内輪でしか通用しない脆弱な代物か?

何をもって脆弱かについての議論ですが、他の世界(社会人の能力開発業など)でケーススタディを使用する場合、当該を通じて何かを学び取ってねといった熱い思いがあり、ゆえに再現が期待されるセオリー、覚えていただきたい方程式や原理原則が中身にセットされています。

一方、人材アセスメントで使用するケーススタディは、受講者の皆さんの仕事をする力(マネジメントスキル)を確認・評価することを目的に作成されており、このようなセオリーや方程式、原理原則については二の次となっています。

よって、全体的にケーススタディの現実感、緻密性、論理性、説明力などは、他の世界のものに比較すると、脆弱になっていることは否めません。

脆弱度合いのランキング

人材アセスメントの各演習で使用するケーススタディ、その中での脆弱度合いですが、これはやはり面談演習がトップ、次いでグループ討議、インバスケット演習、方針立案演習の順になります。

脆弱度合いがなぜこのような順になるのかについては後日、機会があればですが、今回は面談演習で使用するケーススタディの脆弱度合いが最も高いを念頭に話題を進めていきます。

脆弱度合いが高いことによるアセッサー側のメリット

これはもう、この一点です。

「脆弱ゆえに与件の自由度が高く、自分のペースで面談演習を進めることができる」

受講者の方の最初の一言、あるいはグループ討議で描いた仮説によって、ゆるく記されたケーススタディの設定の中から一部をハイライト、部下側(アセッサー)からの最初の矢を緩くしたり強くしたり、あるいは受講者の方が思いこんだ設定、それを覆して圧を高めるため、設定にない状況をこちらから捏造したり…。

アセッサーは自分が構造的に優位に、受講者の皆さんを構造的にさらに不利にすることによって、受講者の皆さんの対人面のコンピテンシーや資質面のコンピテンシーを探るためのアプローチがし易くなります。なので、ケーススタディに事細かく正しく書いていないほうが、アセッサーは捏造、謎設定が簡単になります。

これが面談演習のケーススタディの脆弱度合いが高い、逆説で自由度が高い、つまり「アセッサーは何をいってもOK」の構図となる背景です。

だから時々みかけるんですよね

ケーススタディの状況設定に全く関係ない趣味の話を持ち掛けたり、今日のランチについてディスカッションをふっかけたり、部下部下パターンのケースでもないのに勝手に部下の話を長々としたりするアセッサー。

逆に自分が担当するグループ6名全員に、型にハマった同じ質問、同じ反論、同じ泣き落としで対応するアセッサー。

この手のアセッサーについての議論は別の機会にですが、逆に受講者の皆さんがこのようなアプローチをとっても特に問題はない。さらに何らかの目的があるのであれば積極的に関係ない話題で盛り上がることも可能です。

ただし、受講者の皆さんが面談演習の冒頭、休日の過ごし方や趣味の話題でアイスブレイクを図ったとしても、それはアセッサーの想定内なので、冷たい対応、すげない対応、どころか完全スルーでイヤな汗をかくことになるのでヤメておきましょう。

本線の話

前説はここまで、面談演習のケーススタディは自由度を高くするため細部まで現実的に全てが書かれていない、よってそのスキマを活用してアセッサーは受講者の皆さんを追い込んできます。

なので、同じケーススタディを使ってアセッサーと対峙する受講者の皆さんも、スキマを活用してアセッサーを追い込んでみてはといった提案が本線です。

このスキマの活用、つまり、ある状況がケーススタディに書いてある。その状況からこんな解釈が可能ですね。まともな解釈だとアセッサーはついてくるし、明後日の方向への解釈だと自分の理解力が疑われる。

だから「アセッサーが想定していない見てきたような嘘を言い」、つまり捏造がポイントを稼ぐ訳ですね。ここは一点注意ですが、捏造そのものは評価対象になりません。捏造することによってアセッサーを追い込む、そして自分が優位な立場から面談演習を進めることによって、その中でいくつかのコンピテンシーを高く評価させることが可能になるといった流れです。

捏造について実際のケーススタディで考える

次の面談演習のケーススタディ(抜粋)で考えてみましょう。今回のケーススタディは【部下部下パターン】、目の前の部下である森下さんが、そのまた部下の浅田さんと問題を抱えているといった構造です。

就任後1週間が過ぎた日、東日本グループ・第一営業チームのリーダーである森下が、その部下である浅田との間にトラブルを抱えていることをあなたは耳にした。周囲にトラブルの状況を確認したところ以下のような状況が判明した。

・森下は新卒入社12年目、製品知識だけでなく、測定対象物の層や成分に合わせた測定システム全体までを提案する力を備えたトップセールスであり、ここ5年間、東日本グループの売上高の平均約10%を占める実績を計上し続けている。
・その成果を踏まえ、3年前には第一営業チームのリーダーとなったが、予想に反してチームメンバーのマネジメントは今一つの状況が続いている。
・特に浅田との関係性の構築に難があり、以前から森下は浅田に対してその知識不足を強く指摘、同時に営業の第一線から離れ、営業サポートチームへの自主的な異動をアドバイスするといった状況が続いていた。入社年次としては先輩、年齢は同じである浅田に対して以前より含むところがあった森下は、特に浅田に対する指導や育成が厳しいともっぱらの噂である。

捏造の仕方(アセッサーであれ受講者の皆さんであれ)

・浅田さんの今期の目標達成率見込みは30%水準なんですよ

・森下さんの入社当時、浅田さんは先輩であり、森下さんへのあたりは厳しかった

・営業サポートチームは営業チームのサポート中心であり、営業の下回りの業務が中心で

・森下さんの配下には浅田さん含めて5人のメンバーがいるが、浅田さんは周りから浮いている

いかがでしょう?

このようにケーススタディに書かれている内容を発展的に捏造させることの意味はご理解いただけますでしょうか?

で、この捏造の活用方法ですが、アセッサー側(部下役側)からすると「だから自分の意見が正しい」、受講者の皆さん側(上司側)からすると「だから自分の意見で事態収拾を考えてほしい」となります。

こうなってくると、その意見のどちらが正しいかなんか証明できなくなります。そもそもケーススタディの中でファクトとして書かれている部分を、発展的に捏造的に解釈したものですから…

ただし、経験則的に振り返ると、捏造してくるのはアセッサー、正しいとゴリゴリするのもアセッサーなんですね。なぜでしょう?

アセッサーは捏造が好きだから

これも理由として上げられますが、面談演習のメタ設定上、アセッサーが捏造がしやすい、そして受講者の皆さんの捏造を「そんなことないです」と却下しやすいことにあります。

つまり、多くの面談演習の基本的なメタ設定、上司役の皆さんは他部門から1週間前に異動してきた、目の前の部下はその問題の当事者として以前から存在している、これによって上司役の皆さんは部下役のアセッサーにあれこれ現状をヒアリングするし、仮に上司役の皆さんが捏造をしたとしても「事情を詳しく知っているのは部下の私だから、それは間違いです」と対処しやすいからなんですね。

ではどうすれば?

じゃあアセッサーの捏造から逃れることはできないのか?

じゃあアセッサーがニヤニヤしながら「答えられないよね」と捏造を塗して追い込んでくることを回避できないのか?

ご安心ください。ナンボでも回避方法は存在します。

知りたい受講者の皆さんは…