「調査してください」の正体
確認や調査の指示は想定通りに低評価
以前から本コラムの中で、合格セミナーの中で、受講者の方との個別相談会の席上で、「確認や調査の指示は低評価です」とお伝えしています。
今回はその「なぜ」を深掘りします。
「調査してください」と書いてしまった後、受講者の皆さんは薄々気づいています。
「…これ、マズいかな」
でも同時にこうも思っています。
「でも情報が足りないんだから調査は当然じゃないか」
ここです。この「当然じゃないか」が本質を見誤らせています。案件の中の「不明点」こそが、出題者があなたに考えてほしかった部分です。「調査してください」と書いた瞬間、受講者の方は出題者に「考えがおよびませんでした」と申告していることになります。試験中に「この問題の答えを教えてください」と挙手するのと、構造は全く同じです。
「素晴らしい調査依頼」があった
さて、今回はここからが本題です。先日、みんなのアセスメント・サブスク版の受講者の方の解答の中でこのような調査依頼を拝見しました。
北山さん
情報共有、早速の会長への聞き取りありがとうございます。
追加で下記を調査お願いします。
・業績回復が見込めないことは業界全体の低成長が主要因か。
・社内での派閥抗争の内容と各派閥のメンバーの名簿。
・馬飼野商事の取引先の困りごと。
・馬飼野商事の商品在庫の処分で困っていることはないか。当社が買い取る場合の価格ターゲット。
いかがでしょう。シンプルな「調査してください」とは明らかに一線を画しています。調査項目が具体的であり、特に「商品在庫の処分」「当社が買い取る場合の価格ターゲット」は自社の動きを前提にした調査になっています。アセッサーとしても一定の評価を迷わずつけられる解答です。
ただし、ケチがつく
「一定の評価」と申し上げたのには理由があります。この解答、実は2点、ケチがつく可能性があります。
①高いボール問題
「業績回復が見込めないことは業界全体の低成長が主要因か」、これを北山さんは調査できるでしょうか。業界全体のマクロ分析を内部の人間が独力で行うのは現実的ではありません。自分の仮説を持たないまま、難易度の高い調査を相手に丸投げしている、とアセッサーの目には映ります。
②目的不明問題
「社内での派閥抗争の内容と各派閥のメンバーの名簿」、面白い着眼点です。しかし、それを入手してどう使うかが書かれていません。目的のない調査依頼はアセッサーに「で、どうするの?」と思われます。
では、どうすればいいのか
答えの原則は、実はとてもシンプルです。
調査項目を並べる前に、自分の判断と方向性を先に示す。これだけです。
なぜこれで評価が変わるのか。順序を入れ替えるだけで、同じ調査項目が全く別の意味を持ち始めるからです。
「業界全体の低成長が主要因か調べて」は、そのまま出せば丸投げに見えます。しかし手前に「私は業界全体の低成長が主因だと見ている」と自分の読みを置いてから「その裏付けを取ってほしい」と続ければ、それはもう丸投げではなく仮説の検証依頼に変わります。北山さんに投げているボールの高さは同じでも、投げ手が既に自分で球筋を読んでいることが伝わるのです。
「派閥のメンバー名簿を調べて」も同じです。手前に「派閥抗争をそのまま取り込むと自社にリスクが波及する。だから慎重に扱いたい」と置けば、名簿を求める理由が生まれ、目的のある調査に変わります。
つまり、方向性を先に示すとは、アセッサーに対して「私はもう考えた。これは考えた上での調査だ」と宣言する行為なのです。「調査してください」は低評価、「素晴らしい調査依頼」は一定の評価、しかし本当の金の解答は、アセッサーに「この人は既に考えている。調査はその確認と実行のためだ」と読ませる解答です。調査は手段であり、目的ではありません。
…と、ここまでが原則です。
しかし、勘のいい受講者の皆さんはこうくるでしょう。「方向性を先に、は分かった。でも、あの高いボールや目的不明な項目を、具体的にどう書き直せばいいのか?」そうなんです。原則は簡単ですが、実際に解答へ落とし込むとなると話は別です。
しかも、この「金の解答」には、まだ取りこぼしているコンピテンシーが一つ残っています。「理解」「分析」「決断」「創造」は取れる。しかし、あるコンピテンシーだけは、この書き方では評価されません。
それが何か、そしてそれをどう取りに行くか。
この続きは、9月開催の合格セミナーでたっぷりお伝えします。「素晴らしい調査依頼」を金の解答へ磨き上げる具体的なブラッシュアップ、そして取りこぼしを拾い切る最後のひと手間、みんなのアセスメント・サブスク版の会員の皆さんとご一緒に手を動かしていきましょう。
ご参加、お待ちしております。
