面談演習で部下を褒める必要はない?(続編)
「心を込めて真剣に真摯に直向きに全力で褒める」の正体
前回のコラムのサゲで「続きは合格セミナーの中で」と書いたところ、数名の受講者の方から「じゃあ合格セミナー、受けます」と前向きなご連絡をいただきました。ありがとうございます。
一方で「引っ張っておいて合格セミナーに誘導するって商売が上手いですね」とニヤニヤした受講者の方も複数名。こちらは否定しません。ただ、今回は少し開示します。完全開示ではないですが、方向性だけでも。
前回のおさらい
面談演習の冒頭、部下を褒める受講者の方は5人に1人。その大半はアセッサーに完全スルーされるか、共感性羞恥の槍玉にされるか。それでも褒めましょう、が前回の逆張り提案。
問題はその褒め方であり、「心を込めて真剣に真摯に直向きに全力で」がキーワードだとお伝えしました。
「えっ、それだけ?」と数名から突っ込まれましたね。はい、それだけではありません。
ケーススタディの例に戻ります。
「松浦はSPや消費者心理に関して広くかつ深い知識を有していることはもとより、クライアントと外注先の間で両者の調整を図るスキルも高い。加えて、チームの後輩の面倒見もよく、部内のグループ長や他のチームリーダーからの評判も抜群である」
このケーススタディを読んで面談演習に臨む受講者の方の多くが取り組む褒め方がこちらです。
「松浦さん、日頃から知識も豊富で評判も良いと聞いています、これからも頑張ってください!」
なぜスルーされるのか。それは「ケーススタディに書いてあることを読み上げているだけ」だからです。部下の立場で考えてみてください。自分のことを本当に見ていてくれている上司の言葉と、紙に書いてあることをそのまま読み上げている上司の言葉、どちらが心に届きますか。
答えは言うまでもなく前者ですよね。
では「完全スルーされない褒め方」とは?
前回のキーワード「心を込めて真剣に真摯に直向きに全力で褒める」の本質はここにあります。
「紙に書いてあることを読み上げない」、これだけです。
具体的には、ケーススタディに記載されている部下の強みや実績を、今回の面談のテーマと紐づけて語ることです。
松浦さんの例で言えば、「クライアントと外注先の調整スキルが高い」という記述。これを「素晴らしいスキルですね」の読み上げレベルの称賛ではなく、今回の面談の背景にある問題、例えば「それだけ力があるあなたが、なぜ今この局面でこういう異動を要請したのか」という文脈に乗せて語ることで、はじめて部下役のアセッサーに「この上司は自分のことをちゃんと見ている」と感じさせることができます。
つまり、称賛そのものが目的ではなく、称賛が面談のテーマへの橋渡しになっている状態が「完全スルーされない褒め方」の正体です。
アセッサー目線でお伝えします。面談演習で称賛が「部下育成」のコンピテンシーとして評価されるとしたら、それは「褒める行為そのもの」ではなく、「その部下の何を見ていて、何を期待しているか」が称賛の中に込められているかどうかです。
「評判が良いですね」は観察して称賛ではありません。「クライアントとデザインハウスの間で、あなたほど双方の事情を汲んで動ける人は、うちの部門でそうそういない。だからこそ今回の話を聞きたかった」、これが観察して称賛です。前者は「読み上げてるだけ」と映る。後者は「この上司はこの部下のことを本当に見ている」と映る。この差が、「完全スルー」と「次の展開への布石」を分けます。
最後に
面談演習で部下を褒めることの是非より、褒め方の解像度を上げることが本質です。ケーススタディに書いてあることをそのまま使わない。そして称賛が「今日の面談の目的」と必ず繋がっている。この2点を意識するだけで、面談演習の冒頭の質が変わります。「心を込めて真剣に真摯に直向きに全力で」とは、要するにそういうことです。
そして「それだけ?」という受講者の方に向けて。はい、それだけです。ただし、この「それだけ」を体得するには、やはり合格セミナーの中でのリハーサルとトレーニングが最短ルートです。
…とここまで書いてきましたが、鋭い受講者の方はもうお気づきですよね。「それって結局、どう褒めるの?」と。おっしゃる通りです。正直に申し上げると、これは70点のコラムです。「ケーススタディに書いてあることを読み上げない」「称賛を面談のテーマと紐づける」、確かに間違いではありませんが、29年間の経験が、この程度の内容に着地しているとしたら、それはそれで問題ですよね。
今回のコラム、「褒め方の方向性」止まりで、「褒め方の中身」まで到達できていません。その「中身」こそが100点のコラムです。次回、いつかのコラムで必ずお届けします…たぶん。
